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ヨガのポーズ名を読む:āsana・mukha・koṇa・pādaとは?
2026年9月17日
ヨガのポーズ名を見ていると、同じような言葉が何度も出てくることがあります。
Trikoṇāsana、Padmāsana、Śavāsana。
Adho Mukha Śvānāsana、Ūrdhva Mukha Śvānāsana。
Eka Pāda Rājakapotāsana。
一見すると長くて難しそうなSanskritですが、よく見ると、同じ「部品」がいくつものポーズ名に繰り返し登場しています。
今回はその中から、
- āsana
- mukha
- koṇa
- pāda
の4語を調べます。
これらを覚えればSanskritを自由に翻訳できる、というわけではありません。
でも、いつも聞いているポーズ名が「何についての名前なのか」を少し読みやすくなります。
ポーズ名は「暗号」ではなく、言葉の組み合わせ
「Sanskritのポーズ名は難しいから、日本語名だけ覚えればいい」と感じる人もいるかもしれません。
もちろん、すべてのSanskrit名を暗記する必要はありません。
ただ、頻繁に登場する言葉をいくつか知っていると、初めて見るポーズ名にも手がかりができます。
たとえば、
Adho Mukha Śvānāsana
と
Ūrdhva Mukha Śvānāsana
には、どちらにも
mukha、śvāna、āsana
が入っています。
違うのは最初の部分です。
名前の部品が見えるようになると、二つのポーズが名前の上でも関係していることが分かってきます。
āsana ― 「ポーズ」だけではない
āsana(आसन)は、ヨガをしている人なら最も耳にするSanskrit語の一つでしょう。
現代のヨガでは「ポーズ」という意味で使われることが多い言葉です。
ただ、Sanskrit辞書を確認すると、「座ること」「座席」「姿勢」など、もっと広い意味を持っています。
YogaTownでは別の記事で、このāsanaという言葉が古典ヨガから現代までどのように使われてきたのかを詳しく調べています。
今回注目したいのは、現代のポーズ名では、末尾の-āsanaが「〜の姿勢」「〜のポーズ」に相当する形で繰り返し現れることです。
たとえば、
- Trikoṇāsana
- Padmāsana
- Śavāsana
などです。
ポーズ名の最後にāsanaがあったら、「これは○○を表す姿勢の名前なのかもしれない」と考える最初の手がかりになります。
mukha ― 「顔」から「〜を向いた」へ
mukha(मुख)の辞書的な意味には、「口」「顔」「前面」「方向」などがあります。
ヨガポーズ名で分かりやすいのが、
Adho Mukha Śvānāsana
です。
現在一般に「下向きの犬のポーズ」「Downward-Facing Dog」と呼ばれています。
大まかに見ると、
- adho ― 下方向
- mukha ― 顔・向き
- śvāna ― 犬
- āsana ― 姿勢
という構造が見えてきます。
ここでmukhaを単純に「顔」と訳すより、「〜を向いた」「〜に面した」という働きをしていると考えると、日本語名との関係が分かりやすくなります。
同じことは、
Ūrdhva Mukha Śvānāsana
にも当てはまります。
こちらは「上向きの犬のポーズ」「Upward-Facing Dog」です。
二つを並べると、mukha śvānāsanaという共通部分に、下方向を示す言葉と上方向を示す言葉が組み合わされていることが見えてきます。
koṇa ― 「角」を表す言葉
koṇa(कोण)は、「角」「角度」を表す言葉です。
代表的なポーズ名が、
Trikoṇāsana
です。
名前を分けてみると、
- tri ― 三
- koṇa ― 角
- āsana ― 姿勢
という構造が見えてきます。
日本語の「三角のポーズ」や英語のTriangle Poseとの関係が、とても分かりやすい例です。
koṇaは、
- Baddha Koṇāsana
- Upaviṣṭha Koṇāsana
など、ほかのポーズ名にも登場します。
ただし、名前にkoṇaが入っているからといって、「身体を必ず何度にする」という現代的な角度指定を意味しているわけではありません。
あくまで名称を読むための手がかりとして考えるのがよさそうです。
pāda ― 「足・脚」を表すことが多い
pāda(पाद)は、ヨガポーズ名では「足」「脚」に関係する意味でよく登場します。
たとえば、
Eka Pāda Rājakapotāsana
は、英語でOne-Legged King Pigeon Poseと呼ばれています。
名前の一部を見ると、
- eka ― 一つ
- pāda ― 足・脚
です。
そのため、ポーズ名の中にeka pādaを見つけたら、「片脚」「一つの脚」に関係する名前ではないか、と推測する手がかりになります。
ただし、pādaという言葉そのものには「足・脚」以外の意味もあります。
Sanskrit辞書では「四分の一」「詩の一部分」などの語義も確認できます。
つまり、辞書に複数の意味がある言葉の中から、ヨガポーズ名では特定の意味が使われているということです。
pādaとpadaは同じ?
Sanskrit表記を見るとき、もう一つ注意したいことがあります。
pāda
のāは長母音です。
一方、Sanskritにはpadaという別の形もあり、「歩み」「語」「位置」などさまざまな意味で使われます。
ヨガのWebサイトや書籍では、発音記号を省略してpādaもpadaと表記されることがあります。
そのため、
Eka Pada …
と書かれていても、SanskritをIASTで表記するとEka Pāda …となる場合があります。
YogaTownでは、確認できる場合は本文や用語データベースでIASTを使い、URLや検索用の表記ではASCIIのpadaも利用します。
実際に3つのポーズ名を読んでみる
Adho Mukha Śvānāsana
- adho ― 下方向
- mukha ― 顔・向き
- śvāna ― 犬
- āsana ― 姿勢
現在の「下向きの犬のポーズ」という名称との関係がかなり見えやすい例です。
Utthita Trikoṇāsana
- utthita ― 伸ばされた
- tri ― 三
- koṇa ― 角
- āsana ― 姿勢
英語のExtended Triangle Pose、日本語の三角のポーズ系名称とのつながりが見えてきます。
Eka Pāda Rājakapotāsana
- eka ― 一つ
- pāda ― 足・脚
- rāja ― 王
- kapota ― 鳩
- āsana ― 姿勢
英語ではOne-Legged King Pigeon Poseと呼ばれています。
この例では、「片脚」という身体的な特徴、「王」「鳩」という名称要素、そしてāsanaが一つの名前に組み合わされています。
でも、単語を足せば必ず翻訳できるわけではない
ここまで読むと、ポーズ名を単語ごとに分解すれば簡単に翻訳できそうに見えるかもしれません。
実際には、もう少し複雑です。
Sanskritでは複数の語が組み合わさって一つの複合語になることがあり、組み合わせ方によって全体の意味も変わります。
また、現在流通しているヨガポーズ名には、表記揺れや、現代になって一般化した名称もあります。
そのため、YogaTownでは
「単語の意味を知れば正確に翻訳できる」とは考えません。
頻出語を知る目的は、翻訳者になることではなく、名前を見たときに、そのポーズが何を手がかりに名付けられているのかを少し読み取れるようになることです。
ポーズ名には、いろいろな情報が入っている
今回の4語だけでも、ポーズ名にはさまざまな情報が含まれていることが分かります。
- āsana ― 姿勢
- mukha ― 顔・向き
- koṇa ― 形・角
- pāda ― 身体部位
ほかにもポーズ名を見ていくと、
- 上・下・横などの方向
- 一つ・三つ・半分などの数
- 犬・鳩・魚などの動物
- 手・膝・頭などの身体部位
- 神話上の人物や聖者
など、さまざまな言葉が使われています。
ヨガポーズの名前は、単なるラベルではなく、その姿勢の形や特徴、イメージ、人物との関係を残していることがあります。
今回分かったこと
- āsana、mukha、koṇa、pādaは複数のポーズ名に繰り返し登場する
- それぞれの言葉は辞書上、一つだけではなく複数の意味を持つ
- ポーズ名の中では、そのうち特定の意味が使われている
- 頻出語を知ると、初めて見るポーズ名にも意味の手がかりができる
- ただし、単語を一語ずつ訳すだけでSanskritの複合語を正確に翻訳できるわけではない
- IAST表記と、一般的なASCII表記を区別すると表記揺れを整理しやすい
次に読んでみたい言葉
今回扱ったのは、ポーズ名に登場する言葉のほんの一部です。
今後YogaTownでは、たとえば、
- adho・ūrdhva ― 上下や方向を表す言葉
- eka・tri・ardha ― 数や「半分」を表す言葉
- supta・utthita・parivṛtta ― 姿勢の状態を表す言葉
- hasta・jānu・śīrṣa ― 身体部位を表す言葉
- śvāna・kapota・matsya ― 動物を表す言葉
なども調べていく予定です。
ポーズを一つ覚えるたびにSanskrit名を丸暗記するのではなく、名前の中に繰り返し現れる言葉を少しずつ知っていく。
そうすると、知らないポーズの名前も、少しずつ読めるようになっていきます。
主な参考資料
- Monier Monier-Williams, A Sanskrit-English Dictionary, Oxford, 1899.
- Vaman Shivram Apte, Sanskrit-English dictionary.
- Cologne Digital Sanskrit Dictionaries, Institute of Indology and Tamil Studies, University of Cologne.
- Yoga Journal, Sanskrit name and pose entries for Adho Mukha Śvānāsana, Ūrdhva Mukha Śvānāsana, Utthita Trikoṇāsana and Eka Pāda Rājakapotāsana.
※ 本記事はSanskritの文法や複合語を専門的に解説するものではありません。YogaTownでは信頼できる辞書や用例を確認し、現代のヨガポーズ名を理解するための手がかりとして整理しています。語源・文法・名称成立史について確定できない事項は断定しません。また、一般に流通しているRomanizationには表記揺れがあります。
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